「不正義の大勝利」を覆せるか – エマニュエル・サエズ『つくられた格差』

エマニュエル・サエズ『つくられた格差』は読んでいてワクワクが止まらない傑作だった。ちなみに出版社のサイトでは底本として明記されておらず「書影の味付け」程度でしか扱われていないが、英題は Emmanuel Saez “The Triumph of Injustice” である。

さて、ピケティ『21世紀の資本論』は社会科学全体を大きく変えた金字塔だと自分は考えているが、特に具体的な処方箋までは示していなかった。そこにサエズは爽快なまでに真っ向からの「答案」を提示している。

格差是正に対しては言い訳めいた反論は数多くあるのだろうが、サエズもピケティよろしく「過去データをご覧ください」「ご懸念のような変化は起こらなかったのです」と返せているのが強い。経済学に限らず理論研究の難しいところは前提条件が強めに設定されていることがある点だった。言い換えると「非現実な前提」を置いてしまっているということであり、政策に落とし込むに当たって二の足を踏むところである。前提条件の弱い研究成果は、汎用的な一般化に成功しているということであり、それはまれに見る大業績というわけだが、歴史というのは実際に起こったことを考証するの信頼性が大変に高い。むろん歴史にもコンテクストがあり、そのまま現代に適用できるわけではないが、人間の営みに落とし込まれてそこで起こった反応などは示唆に富み、仔細に分析するに値する。


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