先週土曜の日経の記事です。
大型ハリケーン「イルマ」に対する警戒が金融業界で広がっている。災害被害への保険金支払いなどで保険業界の損失が13兆円台と米史上最大になるとの予想も出ている。大災害リスクを引き受ける債券を保有している日本の年金基金などの投資家にも、損失が広がる恐れがある。…
自然災害保険を裏付けとした金融商品のおよそ4分の1程度を日本勢が最終投資家として保有しているとの推計もある。
ハリケーン「イルマ」厳戒 保険金支払い、米最大級か 大災害債は元本毀損恐れ :日本経済新聞
大災害債権(CATボンド)を日本勢が4分の1保有しているそうです。思わず「自然災害大好き民族かよ」とツッコミを入れたくなりますが、はたして日本で退職金を大災害債に全ツッコミするような悲劇は起こりつつあるのでしょうか。単なる国民性なのか他に事情があるのか気になったので調べてみました。
■震災で100%デフォルトした例も
CATボンド(カタストロフィ・ボンド、cat bond, catastrophe bond)は平たくいうと「保険の保険」いわゆる再保険を債権化した金融派生商品です。1990年代半ばに始まった新しい仕組みで、東京海上も2015年に350億円規模で発行しています。
地震の規模が一定の基準を超えた場合、最大で投資金額の全額が保険金支払いに回る。4年間で大きな地震が起きなければ、元本に利回りを上乗せして返す。元本が毀損するのは5000年に1度の巨大地震が起こった場合に限られる。
そしてこのCATボンドの20年そこそこの短い歴史でも100%デフォルトした例はあります。それが東日本大地震です。
- 2005年、ハリケーン「カトリーナ」部分デフォルト
- 2011年、「東日本大地震」全デフォルト
一定規模以上の自然災害の発生リスクを証券化によって資本市場の投資家に移転するキャットボンドで元本が100%免除されるのは、導入以来20年の歴史で今回が初めて。
5000年に1度といえどもリスクを1イベントに集中させてしまう危うさをはらんでいます。
■CATボンド人気の理由は?
モーニングスターの記事 大災害債券「CATボンド」という金融商品を知ろう によるとCATボンドには次の特徴があります。
- 株式や債券などの伝統的な金融商品の値動きに影響されない
- 利回りは3~4%台と先進国の国債を上回る
ただ、取り扱い窓口が限られていることから個人投資家には浸透していないと見られます。記事にもある通り、アセットアロケーション目的の機関投資家が受け皿となっている格好でしょう。つまり高齢者が大挙してガンガン退職金を突っ込むような悲劇は起きていないようです。
ただ、それでも日本勢が1/4を占める不可思議さは残っているのですが。そもそも1/4の出典も示されていないので検証は難しいかもしれません。それは今後の課題としたいと思います。
それでは。