ゲンロン「日本は本当に核を持つべきなのか」視聴所感

ニコ生タイムシフトでゲンロンカフェのイベントを視聴したので所感を書き起こしておきます。公式アカウントでトレイラー調の動画をツイートするのは効果的ですね、釣られました。

国際協調路線をとるための道すじ

ゲストは三浦瑠麗さんと津田大介さん。三浦さんは舌鋒鋭い若手論客として地上波でも人気を博している国際政治学の有識者です。

三浦さんとホストである東さんとの共通点は「現実の根底を見定めて、それの肯定から入って理想を掲げる」というところかなと思いました。衆院選の総括を聞きたくて視聴をしたんですが安全保障の落としどころなんかはすごく興味深かったです。

その本題だったともいえる三浦さんの論旨はクリアで「核共有こそ国際協調路線で平和主義である」というもの。日本が被爆国であるというプレゼンスを失わずに平和主義を追求するにあたって、核共有は合理的な選択肢だということもよく分かりました。日本ではときに嫌気がさすほど幼稚な風土があるのは目につくので「血のコスト」や「非核2原則」の話は驚かされこそすれ、すんなり腑に落ちました。

普段、外交安全保障にまで関心が及ばないので、この三浦案を聞けたのは今回の視聴の大きな収穫です。

社会保障政策の議論は持ち上がらないのか

今回の番組で残念だった点があります。それは社会保障と税の改革にほとんど時間が割かれなかったことです。これにはそもそも番組のテーマが核だったことも、選挙の争点として弱かったこともありますが、それでも「本当に考えなくちゃいけなかったのはこれだ」と議論の先鞭はつけてほしかったです。今回の衆院選で政権与党を攻めるとすればここだったという導入もあるし、なりより日本の次の10年の姿を大きく変えうるのは社会保障や税制だと僕は信じるからです。

そういう意味でゲンロンすらも解散権によってテーマを設定する力学から逃れられていなかったと思わされ残念でした。英国労働党のような「リベラル本流」と呼べる野党勢力が不在だという認識がありながら、それならそれを模索するなりで進捗させてみないのは傍観にすぎるのではないでしょうか。

むろん財源論なんかを期待しているのではなく、再分配という、日本は何を大切にしていくのかという社会のグラウンドデザインに関わる言説が聞きたいわけです。それこそ『観光客の哲学』の家族論との繋がりも気になるところです。僕個人としては『21世紀の資本』以降、この再分配の議論が深まらないことに焦りがあります。グローバル化に任せて格差が広がるのをコントロールすることを選ぶかと問われれば、それは国民国家としては選ばざるをえない。では「コントロールするとすればどうするのか」ということについて思想が不足していると考えています。

いずれにせよ社会保障と税は分量が予期されるテーマなので、ぜひ次回枠があるときには扱ってほしいです。

社会保障と税の改革のテキスト
番組の所感からは外れますが、社会保障の議論のベースには 権丈善一『ちょっと気になる社会保障 増補版』 がよさそうです。本書については別途紹介記事を書くつもりです。

番組の感想

最後に、備忘録として番組の感想を書き連ねておきます。

  • 番組の序盤で、「関東で維新を応援している人」が「こころ支持者」と同じく一定数いるとカテゴライズされていて、まさに自分のことなので苦笑してしまった。でも一応いうと僕のいる南関東ブロックは維新で1議席あったんですよ。
  • 東さんが質問者に寄り添おうとするあまりルー大柴語になっていたのにローカルぽさを感じた。
  • 三浦さんの話し方などは今回初めて見たが、論旨がクリアで骨があって物怖じせず主張されるのでそりゃ人気は出るわなと思った。氏の活躍に今後も注目したい。

【追記】東さんから当記事を拾っていただきました。今後、税と社会保障についてふれられることにも期待しております。

番組情報