日本の10年後を変えるには『教養としての社会保障』

NHK世論調査 (2017-11-13) によると今後取り組むべき課題として「社会保障」28%、「景気対策」19%があげられている。政府と国民の足並みがそろってるように見える。

ただ、社会保障といっても日本の国家支出の最大部門であり、その全体像も内訳も把握するのはむずかしい。その入門として『教養としての社会保障』は好著である。

(1) 治安維持としての社会保障

国家をブラックボックスとして捉えて、その入出力を監視してみよう。
すると、税金や社会保険料が吸い込まれ、その大部分が社会保障費として出て行くことがみてとれる。

日本国に特色がでるとすれば、社会保障によって決まると言って過言ではない。さらに、日本の未来は社会保障によって決まるといってもよい。

例えば、日本は先進諸国のなかでも治安が良好である(出典: UNODC)。しかし社会の格差が広がりすぎると、治安が悪化して、極端にはテロリズムが起こる。社会の底辺に固定化されてしまった層にとって「希望は戦争」なのである。実際に、社会階層の「ガラガラポン」が起きたのは戦争だけだったと『21世紀の資本』でも明かされている。

この厄介な社会階層を緩和するのが再分配政策である。しかし再分配政策に手を入れようとすると、どういう社会を目指したいかという国家のビジョンに関わるわけだから「誰から・いくらとって、誰に・いくら流すか」という途方もない仕事になる。目指すべき社会のためにはいくら税金を納めるかを、国民が納得のいくように決めなければならない。

むろん、社会保障も徴税も、利害関係者は多岐にわたる。それだけ合意に至るのも難しくなる。難しいからといって、納税者・あるいは有権者として、社会保障から目をそらすわけにはいかない。

個人的には単純で公平な税負担にベーシックインカムによる再分配が好ましいと信じている。

‪インフレを引き起こさずにベーシックインカムを実現するには‬

(2) 年金は老齢保険である

年金は、長生きして生活できなくなるリスクへの保険と捉えるのが適切なことが本書でよくわかる(慶應大の権上教授はそういった趣旨に則り「年金保険」と呼称している)。

生命保険には「貰い損ね」がない(死なずにすんだため)のと同様に年金も受給しないに越したことはない。となると、実際にリスクが顕在化するまでは75歳までと言わず受給開始年齢を遅らせられるようにするのは理に適っている。

なお、財源については、著者が厚労省の官僚出身である点については十分に割り引いて議論を読み勧めたい。

最後に、いくつか自分のなかで今後の課題としたい点も書き起こしておく。

  • 外国人参政権をどうする(アメリカの「代表なくして課税なし」を思い出したい)
  • 人口減
  • 地方分権

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