満員電車の運賃を値上げしよう

定期的に話題に上る「未解決問題」というのがある。例えば、「エレベーターでは片側を空けるべきなのか」という問題は、都心の駅や商業施設の利用者であれば誰もが少しは不満を抱いたことがあるだろう。

そして2016年の都知事選でも政策課題としてのぼった「未解決問題」は満員電車だ。この悩ましい社会課題に対して、2階建てプラットフォームなんていう壮大な案まである。落下防止ゲートですら数年がかりなのにそんな大がかりなことが現実的な時間枠で実現可能なのかはなはだ疑問である。

■実現していない原因は

そんな満員電車の問題について、『経済学でわかる交通の謎』ではラッシュアワーの運賃を高くすることを提案している。電車が空いてるときと混んでいるときとで価格差をつけて、普通の商品と同じように「人気なものの値段は高く」すべきという主張である。ロンドン市内で混雑料をとって渋滞を解消した話が有名だが、それに類する発想といえる。またワシントンDCでは地下鉄のピークロードプライシングが導入されている。

良い案に思えるが、逆に、なぜこれまで日本では実現してこなかったのだろうか。1つの理由としては、時間帯によって路線価を変更するのが技術的に難しかったということは言えそうだ。しかし、昨今はSuicaが普及しているので実現ははるかに容易になってきているだろう。少なくとも2階建てプラットフォームよりはコストは少ないはずだ。

もう1つ考えられる理由は、公共交通機関の運賃は柔軟に変えられないという事情もありそうだ。詳しくは踏み込まないが、例えば鉄道の場合は鉄道事業法で運賃が定められている。もし法改正が必要であれば、クリアすべき政治課題があるかもしれない。

■定員乗車を目指して

さらなる興味深い展開も期待できる。値上げがきっかけとなって、満員電車のそもそもの原因である「始業時間が集中している」という問題が、解決に向かってしまうことすらありえるのだ。これで混雑料が不要になったりするとおもしろいが、ロンドンの事例を見るにおそらくいくらかは値上げした状態で安定するのがおおかた予想される。

また、類似の取り組みとして、東京メトロの 早起きキャンペーン がある。乗車時間を分散させるという点で、混雑料と発想が共通している。この取り組みは、導入への反発がはるかに小さいという点で混雑料よりも優れている。しかし、人々の損失回避バイアスを考慮すると、混雑料のほうが多くの人の行動を変えさせるであろう点には留意が必要である。

さらにいうと、この東京メトロの早起きキャンペーンが持続可能かも検証がいるだろう。ロンドンの取り組みのように、限られたな社会的リソース(道路や電波帯、通勤時間の座席など)を利用する場合、受益者負担のほうが好ましいことは十分ありうる。

導入への反発を和らげるという観点では、運賃の値下げも検討したい。混雑時の電車で徴収した運賃を原資に、空いている時間帯の割引きを行うのだ。こうすれば一方的な値上げではなく、あくまで乗車率をならすことが目的だと理解してもらいやすくなるだろう。政策パッケージとしても「満員電車解消に向けた値上げ」としてではなく「乗車率の平準化に向けた時間帯別料金」としてメッセージを発するのが良さそうだ。例えば、平日に休みをとって地方へ出かけると家族総出でも交通費はほぼ無料というような形が考えられる。

ぜひ定員乗車(混雑率100%)を目指して、混雑料を前向きに検討してほしい。

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