コミュニティマーケティングの勉強会 CMC_Meetup #13 に参加しました。

■コミュニティマーケティングの評価軸
経営陣からコミュニティマーケティングをどう捉えているかということで、下記2例が紹介されていました。
- Nulab「JBUG」
- freee「マジカチmeetup」
参加にあたって個人的に最も問題意識があったのは各社がどのように成果を測っているかだったのですが、次の2つの評価軸が印象に残りました。
- 会社のバリューにあったアウトプットが出てきた数
- 自走できるUGが増える
前提としてコミュニティの活動はオフラインが主体なので、そこから数値を追うのは難しいという背景があります。それは技術で解決できそうですが、少なくとも現時点ではコミュニティの参加者が自社製品を使い始めたかなどの数値をトラッキングするのは非効率です。そこで発表ではコミュニティでどれほどのアウトプットがあったかを計測していると話がありました。他の発表でも参加人数やハッシュタグのツイート数をもちいて活発さを示しているのをみかけました。
逆によくあるアンチパターンとしては、参加人数などのプレーンな数値をKPIにすると参加者の質が下がってしまうことが多々あるそうです。だからこそ、会社のバリューを伝えてくれるようなアウトプットのみに絞って指標にしているのでしょう。
■コミュニティが利きやすい顧客フェーズ
理論面の話としては、コミュニティ運営がマーケティングファネルで効いてくるのは次の2点だそうです。
- リテンション (retention): チャーンの低下やクロスセル・アップセルに成果が表れる
- 自分ゴト化 (demand generation): ユーザー自身による紹介や発信を通じて、自分ゴト化が進む
整理すると、コミュニティマーケティングは新規・既存問わず自社製品のユーザーによる評価(いわゆるウィンザー効果)を大きくしていけるのが利点といえます。

またMRR/LTVのフェーズが入っていることからも見て取れる通り、コミュニティマーケティングと相性がいいのはSaaS企業です。このことからコミュニティ運営はCustomer Success部門と密接に関わります。
具体的なコミュニティと自社との関わりや、実際に役立った事例としては次のような点があげられていました。
- freee: 士業のひとに普及するのに役立った
- Nulab: 会社自体がOSS的なコミュニティ発祥→そしてコミュニティから教えてもらいながら成長してきた
素人目線では士業は同業他社で競争意識がある閉じたコミュニティなので、ユーザー同士による伝播がないと開拓が厳しそうだと思えました。
また自分はエンジニアなので、NulabのOSS的な話は腹落ちしました。ただ、ざっくりと話を聞いた程度では「生存者バイアス」なのではないかと思わされました。ということでコミュニティに頼って会社の改善サイクルを回すのは実際にどれほど再現性があるかは疑問です。話はそれますが、よく考えると「効率厨」が多いソフトウェアエンジニアたちが一見非効率なオフラインで自主的にイベントを開いている文化は面白いですね。
■コミュニティのはじめ方
スタートアップが自社製品のコミュニティを立ち上げるときの手順は次の順序で意識してすすめると成功しやすいとのことでした。
- まずは使ってもらってPMF
- ファンができる
- 最初のリーダーを見つける(例: Twitterのエゴサをして声をかける)
- 最初に集まる人はポジティブで愛があるかが大切なので、自走するようになるまでは特にケアしておく
- ユーザーの声を可視化して広げていく
■各社事例
箇条書きで気になった点を列挙しておきます。
- AWS
- 七夕で願い事を書く
- KDDI
- 発信では登壇者を推す
- エンプラは大義名分が不可欠
- 初年度はデータ取りだとネゴっておく
- 報告の機会を逆手にとってポジ情報をながす
- freee「マジカチ」
- 参加人数: 300名
- 特徴: freeeサービスは世界観を伝えてくれる
- 利点: 仕事のレベルアップに役立つ
- その他
- 旧UGを止めるときは並行期間をもうける
- コミュニティの新陳代謝は良いものだ
- 企業トップとの近さ
■所感
私の勤め先はグローバル全体で Atlassian User Group を長らく運営していて会社自体がコミュニティへの貢献に前向きなので、今回の1つのテーマだった経営陣に必要性を説得するという点に問題はなかったのでイベントの趣旨とはあっていませんでした。でもオフラインならではの熱量を肌で感じられたのは有意義でした。
またこのイベントに限りませんが、自分の詳しくない分野のミートアップに顔を出すのは常に勉強になります。特に各社模索している分野や飛び交う用語(すでに定着した知見)などに高密度で触れられるのが気に入っています。
最後に今回のイベント自体が運営面で改善できると思った点をあげておきます。
- ラップトップからツイートなどをするため会場にゲストWifiを案内しておく
- お酒を飲まない人のために懇親会はソフトドリンクを用意する