TL;DR: おうちにNASがあると、手元のマシンが壊れたときに素早く復旧できて便利やで。そして要件次第では意外とSSDも選択肢に入るぞ。
(1) なぜバックアップが大切なのか
おいおい、2020年だぞ。いまだにローカルでのバックアップなんて言ってやがるのかと思われるかもしれないが、そうでもないのだ。ここ最近、業務用の MacBook Pro が突然起動しなくなる事態に陥ることが同一筐体で複数回あった。公式サポートでロジックボードごと取り替えてもらってからも、同様の起動不能に陥ったのだから困った(一度はリカバリーモードから First Aid を試みて救出できたが、数週間後にはmacOSアップデートの再起動から立ち上がらなくなった)。
同じ故障には90日間の保証があるので金銭的にはいいのだが、ハードウェア取っ替えなので再構築に時間がかかってしょうがない。いや、失ったら困るデータはDropboxなどクラウドに保管しているので致命的ではないのだが、アプリケーションのインストールやらシステム設定には時間を取られる。ある程度スクリプトで自動化していても、スナップショットによる復元にはかなわない。スナップショットなら、例えばブラウザで開いていたタブとかも覚えてくれているからね。こうしてバックアップを取ることの大切さを痛感させられたわけだ。
(2) バックアップの敷居を下げたい
さて失敗から学び、定期的な Time Machine を励行しはじめたわけだが、これがまた面倒くさい。なにが面倒くさいって、
- (2-1) MacBook Pro に外付けHDDをつなぐ。それも USB-C to USB-A のドングルを挟んで。
- (2-2) 初回以降の差分バックアップも少なくとも数分は繋ぎっぱなしにしなければならない。在宅勤務でも会議などで移動したいことはある。
この手間をなんとか改善したい。さもないとバックアップ頻度が落ちて、定期的なバックアップ実行という本旨から外れてしまう。
そこでネットワーク経由でのバックアップ環境を構築してみようと思い立った。自宅のルーターは記憶媒体をUSBで接続する簡易NAS機能がついているので、その方向性で探りを入れてみた。
(3) 命題: ご家庭のバックアップにはSSDかHDDか
いま使っている外付けHDDは2013年に1.5万円で入手した WDBKKF0020BSL-JESN なんだが、いつ鬼籍入りしてもおかしくない。買い替えの時期は来た。

要件①アーカイブデータの信頼性: 別に鼻からRAIDを組むつもりもなく、重要なデータはクラウドに上げているので「居てくれたら助かる」くらいの切迫度。ローカルマシン3台のバックアップを担う。寿命を考慮して当初は外付けHDDドライブを調達する予定だった。原理上 アーカイブデータの信頼性ならHDD だろうと思い込みがあったからだが、調べてみるとSSDも電源につないでさえいれば遜色ない。今日日、データ量あたりの値段は無視できるほどの違いなので、がぜんSSDに心が傾く。ぱっと見渡すと、商品は充実している。
- Buffalo SSD-PHU3-A シリーズ: 価格は約2.0万円/1.0TB、NVMe対応で読み書き 1,000MB/s を誇る。
- Buffalo SSD-PGMU3 シリーズ: 価格は約2.4万円/1.9TB、速度は 530MB/s まで落ちるが容量と筐体サイズが有利。
そこそこ速度があるので動画ファイルのメディアストレージとしても使えるだろう。ちなみにACアダプタ経由で電源供給がいらない製品であればコンビニ印刷機でUSBメモリの代替にできる可能性がある(要検証)。
要件②ネットワーク経由のバックアップ: 簡易NAS機能をもつ Wifi ルーターに外付けSSDをつなげば、常時通電しているので相性は良い。うちの TP-Link AX3000 は IEEE 802.11ax 世代なので、イントラであれば 3.5 Gbps とはいわないまでも実用に耐えうる速度は出せるのではないかと期待している。ここではクライアントデバイスの世代交代が追いついていないことは棚に上げておく。
要件③静音性: ネットワーク経由ならHDDでよいのではと思われるだろう。実際、当初は WDBBKG0040HBK-JESN を調達する予定だった。しかしNAS運用を視野にいれると居間に設置することになる都合上、ディスクアクセス時の「カリカリ音」は避けたい。生活空間の快適性を重視するとSSDに軍配が上がる。
(4) 運用してみた
容量の余裕を考慮して 1.9 TB の Buffalo SSD-PGMU3 を購入。

ちなみに有線の場合、HDDは一度つなぐと極力触れないよう気を使うが、SSDは「最悪USB-Cが抜けなければいいか」くらいのゆるい心構えで使える。静かに、ほんのりと暖かくなりながら仕事をこなしてくれる。
ここ数年リピートで愛用している TP-LINK は本当に優秀で、ルーターのHTMLインターフェイスで Time Machine 向けの設定までできる。裏側では Samba での設定が行われているのが、特にプロトコルは意識せずに運用まで持っていける。

いざネットワーク経由でのバックアップをはじめると、初回バックアップ時の見積もり通りは約4時間だった。放置していたので実際にかかった時間は把握していないが、実用的な範囲に収まっている。この Time Machine の予測通りなら 5.6 MBps での転送だったことになる。初回はルーターの近くにいるようにしたほうがいいだろう。

2回目以降は差分のみのバックアップなので時間は短くなる。往年の Time Capsule の体験を彷彿とさせる快適性だ。

TBD: LinuxおよびWindowsマシンでの検証。
(5) 総評
まだ運用に載せ始めた段階なので長期的な評価はできないが、今回実現したバックアップの容易さじたいは自信を持っておすすめする。