動物は睡眠によって推論モデルを保守している

神経学者 Karl J. Friston らが提唱する自由エネルギー原理は、脳の諸機能が果たす役割を「推論」であると説明する。

自由エネルギー原理は「脳の大統一理論」と呼ばれる。従来には複雑すぎて断片的にしか研究されてこなかった脳の機能を、情報処理の発想で全体像を捉え直して数理的な定式化まで成功させた経緯があるためだ。

岩波科学ライブラリー『脳の大統一理論』朗読版を聴いてみたが、パーキンソン病が運動機能を阻害する機序といった説明もされており、空理空論ではなく傍証が確実に積み上がっていることも紹介されていた。

この自由エネルギー原理によると、どうやら睡眠は推論モデルを再構築しなおす時間に相当するらしい。今まで動物がなぜ眠るかは分かっていなかったので、有力な仮説が登場したと言える。機械学習との相似に驚かされるが、睡眠時の脳の働きをコンピューターになぞらえると次のように整理できる。

  • 脳の演算は続いている
  • 外界とのIO(知覚や運動など)を遮断している
  • 処理を中断できる(強い刺激で覚醒する)

例えば Randy Gardner 実験 にあたって幻覚などのせん妄が観測されたが、これは推論モデルと外界との差分が大きくなりすぎた影響と解釈できそうだ。

推論と睡眠については、直近で出版された『能動的推論』(日本語訳)でも Sleep: Model Reduction in Deep Active Inference として言及がある。

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