給料として受け取る「譲渡制限付き株式ユニット(RSU)」の売却について考えたことを書き起こしておく。
■ 背景 – RSUの紹介
長らくRSUは外資系の金融機関やbig techに勤めている場合に報酬として受け取る人が多かった。最近は日系の会社でも広まりつつある。付与のタイミングなどに意外と各社の特色があるので、勤め先を隠したい人は細かな条件などを迂闊に口にしないほうが良い。
2022年現在、確定申告が必須。前提を整理しておくと、RSUを換金するまでのフェーズとしては grant → vest → sale と進むが、付与 (vest) された年に所得税がかかり、売却 (sale, transfer) した年にも譲渡益に対して課税される。このうち vest は株で行われ、所得税は現金で支払うので手元の現金は減る。一般的にRSUを設定するような会社の年収は低くはないと思うが、刹那的な生き方をしていると納税で詰む。国税の予定納税や地方税の納付もあるので、生活防衛資金を兼ねて3〜24ヶ月分の貯蓄はしておこう。このような注意点はあるものの、給与所得者としてはRSUを制御できる要素は少なく、せいぜい給与交渉くらいだろう。
■ RSUの売却 – 銘柄選定
さて本題のRSUの売却について掘り下げてみる。売却は個人が制御できる点が多いので考えることも多い。また、資産運用のスタンスという価値観も絡んでくる。
ここでは普段はインデックス投信の積み立てによる長期投資を行っている(イデコとニーサの枠は使い切っている)と想定して、下記のような制約のもとRSUの買い替え先を検討する。
- 時期: 年1回くらい
- 金額: 数百万〜数千万円くらい
買い替え先の選択肢は次の2つ。
✅ ETF (2559)
✅ 投信 (eS全株)
一般的な理解では、投信は再投資のしやすさに優れ、ETFは信託報酬の安さに優れる。運用の手間だけを考えると投信一択なのだが、手元で計算したところ信託報酬の差額が百万円当たり 200円/年 と大差ない。利回りを5%とするとETFの配当にかかる税金は1000円/年ほどで、再投資による複利効果による差は広がる。
■ 買い替えのタイミング
RSU売却のタイミングは先述の通り年1回がよいと思う。投資の格言「卵は一つのカゴに盛るな」の通り、できる限りRSUは頻繁に売却することが望ましい。インサイダーとはいえ勤務先なのだから、なおさらだ。多くの会社でRSUは四半期の決算ごとに売却する機会があるが、手数料のオーバーヘッドを考慮すると年1回くらいが適当に思える。ちなみに経営が好調な会社ばかりで該当するケースは少ないと思うが、株価が値下げているときこそ無心で年1のケイデンスは守ろう。所得税の割にあわないくらい下げてしまうと目も当てられないが、そんな極端な状況に陥っているならまずは勤務先を見直すべきだろう。
また、買い替え先の商品の購入時期は相場を見定めようとせず、手数料が最小化できる範囲で、最速で買い注文を入れよう。
■ 証券会社の選び方 – リスク分散
金融機関を選ぶのは簡単で、ネット系の銀行および証券会社を選べばよい。今だとSBIと楽天が業界を先導している。いずれも外国からの送金から資産運用までグループ内で完結できる。別に1つの会社に絞る必要はないというか、むしろ分散させたほうが良い。下記のようなペイオフによる個人の保護がある。
- 銀行: 預金保険制度 1000万円
- 証券: 日本投資者保護基金 1000万円
ほとんどのケースで運用総額はペイオフの上限を上回ると思うので、せめて2分割が望ましい。今回の例だと、一括で買うときは積み立てする証券会社とは分けるようにすればよい。
■ BSを把握して支出を減らす
当面の目標というか、大まかな指針についても考えておきたい。純金融資産額が5000万〜1億円に達すると、控えめに見積もっても均して10〜20万円/月の配当になる。この域を超えるのは世帯単位で10%ほどと高い壁ではあるが、もちろん目指す価値はある。若いうちに到達するほど価値は高いので、差し障りのない範囲で支出の節制に努めよう。
リスク資産が増えると、資産の全体像の把握が難しくなる。賃借対照表を作成するしかないが、手頃なサービスはなく、うちでは手作りのスプレッドシートを四半期ごとにメンテナンスしいる。クラウド会計のサービスが個人向けに展開してほしいところ。
免責: 金融商品の取引にあたっては自己判断が求められる。本稿を参考にして発生した損害に筆者は責任を負わない。